タイトスケジュールが引き起こすUI開発のヤバい落とし穴
スマホゲームのUI開発は大量の機能を開発するため時間がかかります。
「仕様決定」 → 「UIデザイン」 → 「API開発」 → 「UI・APIをアプリに組み込む」 → 「演出実装」→ 「デバッグ」といった一連の開発が機能毎に発生ため時間がかかるのです。
ここでいう「機能」とは、以下のようなアウトゲーム機能を指しています。
- ホーム機能(ゲームのポータル機能)
- クエスト選択機能(クエストも何種類もある)
- パーティ編成機能
- カードの強化・覚醒機能
- カードの詳細確認
- ガチャ機能(複数のガチャ機能)
- フレンド機能
- ミッション
- お知らせ
- プレゼントボックス
などなど。上記はあくまで一般的なスマホゲームの機能一覧で、タイトルによっては独自の機能が存在します。
毎度思うことは、アウトゲーム機能はめちゃくちゃ多いってことです。たいてい当初計画していたスケジュールは押します。しかし納品日は決まっているため、何かを削って、先に進める必要があるわけです。
こういうケースで選択しがちな落とし穴について今回は解説していこうと思います。
演出をつけずに機能追加を優先して起こる3つの事件
スケジュールがタイトすぎてヤバい!!ってなったときに「とにかくゲームが動かないことには始まらない!」ということで、演出実装を後回しにして機能追加を優先しがちです。
ここで言う「UI演出」とは以下のようなものを指しています。
- 画面やシーンが切り替わった際の表示/非表示演出
- ダイアログが表示されたときの表示演出
- ボタン押下時の演出
- リスト表示した際のセルの表示演出
- 通信中の演出
- アセットをダウンロード中の演出
- 強化したときの演出
- ガチャを引いたときの演出
などなど(キリがないくらい存在します)。
しかし、これらの演出を「後回し」にして先に進める手法は「悪手」です。
結論から言うと、機能追加が終わった後に演出を組み込もうとすると次の3つの事件が発生します。
- 機能の大規模な作り直し
- バグだらけの状態
- クオリティが上がらずリリース
1つずつ解説していきます。
事件1.機能の大規模な作り直し
エンジニアは演出を考慮せずにせっせと機能追加をした結果、大規模な作り直しをすることになります。
なぜなら、演出を組みこもうとすると、プログラミングの設計と演出の設計に矛盾が発生するからです。UIデザイナーのやりたいアイデアはエンジニアの想像を超えてきます。
エンジニアの想像を超えてくるということは、エンジニアが追加した機能実装がそのアイデアを実現するための土壌になっていないということです。つまりそのアイデアを採用するためには大規模な作り直しをせざるを得ないという状況も有り得るということ。
結果的にスケジュール遅延のリスクが発生します。
事件2.バグだらけの状態
「大規模な作り直しする時間はないが、UIデザイナーのアイデアは採用したい」となった場合、設計はそのままで無理やり詰め込むことになります。
これは最も危険です。なぜなら、エンジニアが想定していない設計をねじ込むため、予期せぬ動作をする可能性があります。つまりバグが大量発生するのです。積み木に例えると、バランスよく大きいものから小さいものを積み上げていたのに、最後の最後でどでかい積み木をおいてしまうようなもので、一気に崩れてしまうかもしれません。
事件3.クオリティが上がらずリリース
結局UIデザイナーがやりたいアイデアは、バグのリスク、作り直しによるスケジュール遅延のリスクがあるため、設計を変えない範囲でやろうということになることもあります。
ここでのリスクは「クオリティが上がらない」ということです。
演出はゲーム開発にとって最も大事と言っても過言ではないくらい大事な機能。それを作り込まずに世にリリースするのはリスクでしかありません。ユーザーの目は肥えているため、ある一定のクオリティを超えていなければすぐにアンインストールされることになるでしょう。
以上、演出を後回しにして機能開発を優先すると起こる3つの事件を紹介しました。
ここからはどうすればこれらのリスクを回避できるのか、ここでは2つの方法を紹介します。
ゲームのクオリティを担保するための2つの方法
演出開発を後回しにするとゲームのクオリティが上がらないということがわかりました。ではどうやればゲームのクオリティを担保することができるのか。大事なことは2点です。
- UIデザイナーとの定期的な対話
- 開発の順序が鍵
1つずつ解説します。
1.UIデザイナーとの定期的な対話
「UIデザイナーとの定期的な対話」これが一番大事なポイントです。
機能開発前、途中、その後含め、定期的にUIデザイナーがどういうゴールを目指しているのか対話しましょう。もちろん最初から「具体的なこうしたい」というプランは無いかもしれませんが、ふわっとしたイメージは持っています。例えば、参考にしたいYouTubeの動画共有でもよいですし、AfterEffectsなどで簡単な動画作ってもらっても良いかもしれません。
その雰囲気を汲み取りつつ、設計するのとないとはでは後の結果に大きな影響を与えます。
エンジニア側の事情を分かりやすく説明することも大事です。このタイミングまでには決まってないとスケジュール的に厳しいということは伝えておきましょう。
ただ、歴戦のUIデザイナーはエンジニアが何も言わなくてもスッと動画を出してくれることもあります。本当にありがたいです。
2.開発の順序が鍵
もう1つ大事なことは「開発の順序」です。ある程度ゲームが動かないと始まらないというのは賛成です。ある程度動かないと評価しようがないからです。
この「ある程度」がとても大事で、ゲームのメインループに関わる機能群の開発は優先して進めて良いと考えています。
例えば、バトル系のゲームであれば以下の機能です。
- タイトル
- ホーム画面
- クエスト選択画面
- 編成画面
- バトル
- バトルリザルト
これらの機能はいったん演出より機能を優先して作ります。
大事なのはこの後です。この後、他の強化画面やガチャ画面を作る必要があるかもしれませんが、待機です。
まずは、演出を作り込むのです。ゲームとして成り立つ最小限の状態で演出を作り込みます。すると、機能の作り直しは発生するのですが、最小限に抑えることができます。
また、デザイナーが思っていたアイデアも実際に組み込んでみると、思ったのと違ったということもよくあります。しかし、演出の方針を変更するにしても最小限の作り直しで対応できるため、スケジュールに対するリスクが小さくなりますし、クオリティは格段に上がります。
ゲームが成り立つ最小限の状態でクオリティを担保していると、何が良いかと言うと、その後に開発する機能は自動的にクオリティが担保されていきます。
なぜなら、アウトゲームは量産をベースに考えるため、機能を使い回すように設計します。つまりクオリティを担保した状態の機能を使い回すことで、追加機能のクオリティは勝手に担保されるのです。
以上2つのポイント「UIデザイナーとの定期的な対話」と「開発の順序」を抑えることでUIのクオリティが上がらないというリスクを大幅に軽減できるのです。
まとめ
この記事では「タイトスケジュールが引き起こすUI開発のヤバい落とし穴」というテーマで解説してきました。
オオバもいろんなプロジェクトでゲーム開発してきましたが、UI演出を後回しにしたタイトルにジョインしたときはかなり大変だった記憶が残っています。
UI演出が得意ですというエンジニアは少ないため、チームによっては必然的に後回しになってしまうことも多い印象です。
これは何度も発信している内容ですが、クオリティはチームビルドですべてが決まります。特にUI演出のエンジニアがすっぽり抜けちゃうことはよくあるため、できる限り演出の組み込みが後回しにならないように注意したいところです。
UI開発は他にも落とし穴は大量に存在します。こういった情報を少しずつこのブログやXなどで発信していくのでフォローやコメントお待ちしております。
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この記事があなたのお役に立てたら幸いです。
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